プロローグ

5/6
前へ
/342ページ
次へ
 そう考えていると、その土煙の中に何かが見えた。    それは紅い紅い背中だった。 「あれは……」  呟いたと同時にそれが煙の中から姿を覗かせた。  紅い体躯。  凶悪な牙をずらっとそろえた巨大な口。  翼はないが、その巨体を足二本で支えている。  遠目からみても、三メートルほどの巨体だ。 「ドラゴン……あれがそうか……」  最強と言われる飛龍種ではないようだ。  どう見ても、翼が見当たらない。  ただし、それでも人間からすれば、歯が立たない天災であるべき存在には違いない。 「ん? ……なに!?」  彼の目に異物が写った。  その紅いドラゴン……その背中になにかがいる。 「人……だと?」  ドラゴンからすれば、ずいぶんと小さい体躯だ。  それが背中にしがみついている。  赤髪の少年?    そう思っても仕方のないくらいの体つきにみえる。   理解すると、体が勝手に動き出す。  あのままでは、巻き込まれて死んでしまうだろう。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加