第39章 セレブよりもハンバーグ

2/5
前へ
/378ページ
次へ
「達樹? 立てますか?」 「う、うん……大丈夫」 驚愕のラスト三十分が貴方を襲う。 なんて宣伝文句に釣られるんじゃなかった。 あまりに怖くて、その三十分間は照義にしがみ付いて震えていた。 スリリングなサスペンスって書いてあったのに、スリリングどころの話じゃない。 もう終盤はただのホラー映画だ。 この監督にはサスペンスとホラーの区別が付いてないんじゃないだろうか。 しかもそれが三十分って 映画の四分の一がサスペンスの分野じゃないなら、そう言っておいてほしい。 差し伸べられた照義の手にどうにか掴まりながら、よろよろと立ち上がった。 「抱っこしましょうか?」 「大丈夫! 別に驚いただけだってば」 確かに驚愕だった。 驚愕過ぎて朝から大変な思いをしてしまった。 劇場を出ると一気に元の世界に戻ってこれたような 試練をくぐり抜けた冒険家の気分になれる。 ほっと一息大きく吐いてから、照義の背中にぴったりとくっ付きながら歩いていく。 「柿花君!」 映画が始まる前にちょっと話した豊崎さんが私服になって、俺達が出てきた劇場の脇で待っていてくれたみたいだ。 俺も照義も全然気が付かなくて、素通りしたらしい。 でももしかしたら照義は気が付いていたのかもしれない。 駆け寄ってきた豊崎さんにわからないくらいに小さくだけど、眉をひそめて少しだけ俺と彼女の間に割り込んだから。 私服に戻るとうっすらと高校時代の彼女の面影を思い出せた。 シンプルなデザインだけど、明らかに質が違うんだとわかる洋服にアクセサリー お嬢様 って雰囲気が服装からも仕草からも感じられた。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7011人が本棚に入れています
本棚に追加