第3章 世界一執事と作ったカレーは。

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 照義がいなかったら買い物を全部終わらせる事はきっと出来なかったと思う。  僕一人だったら、今日の夕飯の材料までなんて到底時間が間に合わなかった。全部を部屋に運び入れて、あの「ケイトラ」を返却してなんて、きっと照義がいなければ、延々に終わらなかった。  大前提としてまず免許を持っていないけど。 「あのケイトラって言うのは便利な乗り物だなぁ、乗り心地は最悪だけど。俺も車の免許取ろうかな!」 「そうですね。金銭的余裕が出来たらそれもいいですね」  こんなに一日中歩くなんて滅多にない。スニーカーで歩きやすかったけど、それでももう足はパンパンで、まだ布団もテーブルも運び入れただけで、何もない殺風景な部屋に大の字で行儀が悪いけれど寝っ転がってしまった。  怒るかな。  チラッとだけ照義の様子を伺ったけれど、買ってきた夕飯の材料をキッチンに並べていて気にしていない。  前なら、絶対に「ダメです」と諭されていただろうけど、もう一般人だから、そういうの気にしなくていいんだ。  良いのか悪いのか……。 「そしたらケイトラだって運転出来るし! 照義は一番に乗せてやる!」 「それはありがたいような、恐ろしいような」  失礼なって言おうと起き上がると、鍋を持った照義がこっちに振り返った。 「さてここで問題です」 「問題?」 「軽トラは乗用車でしょうか? 正解出来なかったら、達樹様はテーブルを組み立ててください」  子供の頃よく同じような事をされたっけ。  習い事を休みたい時とかに、一つだけ照義が問題を出して正解すればその日の稽古は全てキャンセル出来る。いつも問題が難しくて一度も正解できなかった。  でも今回はさすがに疲れている僕にでも簡単な問題だ。 「ぷぷ、照義、そんなのわかる。簡単! 乗用車に決まってる」 「不正解です」 「はぁ? だってタイヤが四つ付いてるぞ!」  タイヤが四つなら乗用車。  二つなら二輪自動車。つまりバイク。 「あれは貨物自動車です。いつか教習所に行ったら習うと思いますよ」 「そんなの知るわけない! なんだよ貨物自動車って、タイヤ四つなのに! 証拠は?」 「車のナンバーが四なのは貨物、五の場合は乗用車です。一つ物知りになりましたね」 「そんなの知らない」  何も知らない。ちょっと拗ねたくなった。
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