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ブラブラするだけでも照義となら楽しい。
帰りは夕方になってしまった。
「今夜はハンバーグにしませんか?」
「! それじゃあさ、じゃんけんで負けた方がハンバーグを捏ねる担当にしよう!」
挽肉を捏ねるのって案外重労働なのをこの間初めて知った。
具材を混ぜ合わせればそれで大丈夫なんて思っていたら、全然そんな事はなくて
腕がもう疲れたってなるくらいまで捏ねないと美味しくないらしい。
だから好物のはずのハンバーグを夕飯のリクエストにするのはずっと我慢していた。
仕事後にそれをやるのはちょっと面倒な気もしたし、照義にもそんな面倒をさせたくなかった。
でも今日は休みだしデートだし
久し振りに食べたいな
なんて思っていたら
照義から夕飯をハンバーグにしないかって提案されて、つい頷いていた。
「私が捏ねますから、達樹様はスープを担当してください」
「あ! まだデートの最中なのに! 様!」
わざと大袈裟にそう言うと、苦笑いをした後に歩きながら頭のてっぺんにキスをしてくる。
もう家はすぐそこで人通りもまばらだから、ショッピングモールの中よりも近くに行けて、自然と少し帰りの歩調がゆっくりになっていく。
「……達樹」
「んー?」
「同窓会いいんですか?」
ゆっくり歩き始めた照義が真剣な顔をしている。
もしかして今日一日そんな事を気にしていたんじゃないかって顔をして。
「行かないよ。仕事あるし」
「仕事なら早退すれば、同窓会に間に合います」
「そこまでして行くものでもないよ」
なんとなく何を言おうとしているのかはわかった。
同窓会にはそれこそ以前の自分と同じ生活を今も送っている同級生がわんさか来る。
そしてそれはただの同窓会じゃなくて、お互いにコネクションを作ったり、将来、家に良い影響を与えられるようにっていう社交の場だ。
没落した柿花の家にとっては何かチャンスが転がっているのかもしれない。
豊崎さんもそう思って誘ってくれた。
「ですが」
「俺は行く気はないし、照義だってそう思うから言わなかったんじゃないの?」
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