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佳菜子の顔を見て笑った沙弥は、スマホを佳菜子に渡した。
画面には悠様の写真と『ボランティア募集』の言葉。
悠様こと山本悠(ゆう)は今では売れていないが、幼少時はその技術の高さから脚光を浴びていたピアニストだ。
アルバムも数人とジョイントして2枚出している。
佳菜子は学生時代、オペラを始めたきっかけが悠のピアノだった。
同い年なのに広い舞台で堂々とピアノを弾くその姿にときめいたのだ。
もちろん悠の容姿がその理由の大半だ。
スラリとした体型と栗色のウェーブかかった髪、キリッとした目元と長い指先。
王子様と見間違わんばかりの雰囲気から醸し出されるピアノの旋律。
ライトで光る悠の汗が佳菜子の視線を縛り付け、楽器のできない佳菜子が唯一できる歌で悠と一緒の曲を演奏したいと思わせたのだ。
「オーディションに申し込むわ。」
佳菜子は沙弥のスマホだという事も気にせず、画面をタップした。
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