第1章

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さて、それからと言うもの、佳菜子は劇団を辞めて悠と一緒に全国を飛び回る慰問ツアーが始まった。 悠のピアノに合わせて佳菜子が歌う。 佳菜子にとっては悠と一緒にいられるだけで幸せだった。 観客が囚人だろうと老人だろうと関係ない。 これが犬でもサイボーグでも人形でも同じ事だ。 悠が飼い主で佳菜子がペットという関係でも構わない。 どんなに虐(しいた)げられても、いや、実際には虐げられてはいなかったが、佳菜子は悠に付いて行くという選択肢以外が頭になかった。 佳菜子は貯金が底をつくと、アパートを引き払って悠のアパートに転がり込んだ。 さらに悠と一緒に同じアルバイトを始めた。 もちろん悠がピアノを弾いて佳菜子が歌うのである。 こうなると、縛っているのは悠だか佳菜子だか分からない。
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