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――居酒屋に入ることはなかった。
大人になったわたし達はもう、何だって出来た。
繁華街の裏通り、ネオンが光る看板の一つに入ったわたし達を、一体誰が止められるというのだろう。
夜景が見える一室、二人きりの部屋。
クイーンサイズのベッドの床に脱ぎ捨てられた服達。
過ごせなかった青春時代の穴を埋めるようにして、わたし達は互いの存在を深く求め合った。
「ねえ、むっこの髪、いいなあ、綺麗な長い髪――お姫様みたい。
それにふんわりいい匂いがするの。
女の子らしい甘いにおい。
わたしもむっこみたいに綺麗だったらなぁ」
ルミナの手を握ったまま寝そべるわたしに向けて、彼女は言った。
「……ルミナがいなくなってから、わたし、ルミナの影を探したんだ。
ルミナの綺麗な髪、ルミナのシャンプーの匂い、ルミナの綺麗な指。
これならいつもルミナが傍に居てくれる……気がして」
その言葉にルミナはぷっと噴き出し、それから「やっぱりね」と言ってまた笑った。
ルミナも――そう、あの時のわたしの髪型、わたしのシャンプーの匂いだったから。
End
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