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ナマエ‥‥‥思い出せない。
なんで?
そういえば、よくよく考えてみればみる程、自分の記憶というものが何処にもない。
それにこの人は誰?
「もしかしたら、昨日頭を打ったのが原因かもね」
彼が視線に気付いて言った。
「?」
思わず首を傾げた。
そういえば、この人…
「‥‥あなたは‥‥‥ダレ?」
「あ~、そうきたか」溜め息混じり言う彼。
「‥‥‥」
しばらく間があった。
「‥‥‥んじゃ、まずは自己紹介するよ。俺の名前は燐。で、君の名前は碧だよ」
そう言って彼、燐が私に笑いかけた。
「君は昨日、家に帰る時に階段から落ちたんだよ。‥‥頭は痛くない?」
私は、頭に巻かれた包帯にそっと手を触れて首をふった。
「‥‥大丈夫」
「それは良かった」
燐がほっと胸を撫で下ろした。
「どうして私に優しくするの?」
考えていた事を口にした。
「‥‥‥碧ちゃん。俺と君は従兄弟同士だよ」
燐が微笑みながら答えた。
私は首を傾げた。
「従兄弟?」
「そう、従兄弟。で、碧ちゃんの話に戻すけど、君は昨日、俺の所に遊びに来て、その帰りに階段から落ちたんだ。‥‥‥大怪我しなくて良かったよ」
溜め息混じりに呟く。
「‥‥‥」。
私は少しためらって、燐に話そうとした。
「‥‥‥あの、」
「碧ちゃん」
同士に言われた。おかげで私の声はかき消された。
しょうがない。
燐の話を先に聞こう。
「‥‥何ですか?」
私は、溜め息混じりに聞いた。
「お腹空いてない?」
‥‥‥確かに、言われて空腹なのに気付いた。
「うん。お腹空いた」
私は軽く頷いた。
燐はにこにこしながら言った。
「じゃあ、俺、近くのコンビニで何か食べるもの買って来るね」
燐は財布と携帯を持った。
「あ。それと、碧ちゃんは大人しくベッドで寝ててよ。今はまだ、安静にした方が良いからね」
燐は私に釘を刺すように言いながらドアに向かった。
カチャ。
ドアの開く音がする。
パタン。
がちゃ。
‥‥燐はカギを掛けて、買い物へ出かけた。
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