11人が本棚に入れています
本棚に追加
「渡辺…?」
「…辛かったですよね…」
「えっ…?」
「苦しかったですよね…
ううん、ここにいる間…課長はずっと苦しかったに決まってる!」
「だが、契約した以上…しばらくは出ていけないからな。」
「私が…私がここに居ます!」
「えっ?」
「私が…課長のそばに…いますから!
だから、泣かないで!」
「…。泣いてねーよ。そばにいるじゃなくて、“居候させて下さい”だろ?
ったく…クスッ」
声をあげて泣く渡辺。
俺は、俺の為にこんなに全力で泣く渡辺を片手で引き寄せ、抱き締めた。
「…か、課長!?」
「泣き止むまでだ。
嫌なら、サッサと泣き止め。」
“渉が結婚まで至らなかったのには、きっと何か理由があるんだわ。”
結婚が無しになったと報告した時、お袋はそんな事を言ってた気がする。
「お前が、その理由なのか…?」
「ふぇ?」
「いいや、何でもない。」
ふと、頭によぎったそんな考えを慌ててかき消す。
.
最初のコメントを投稿しよう!