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「藤井、俺はっ…!」
「帰ってください!!今日までは、ゆっくりさせてやってください!」
「……分かった。藤井、七尾。沙耶を頼んだ。」
「課長…」
俺は、車に乗り込み発進させた。
だが、俺が向かったのは自宅アパートではない。
「すみません、予約はしてないんですが…空いてますか?」
「望月さま!!」
駆け寄って来てくれた女将。
そう。
俺が向かったのは、櫻旅館だ。
「こんにちは。」
「渡辺様のご様子はいかがですか?」
「はい、お陰様で。ただ…まだ記憶は戻らないみたいで…」
「左様でございましたか…
望月様、どうか望みを捨てずに側に居て差し上げてください…」
「そう出来たら良いんですが、彼女が自分を忘れているという事が…やはりショックで。」
“自分を忘れているという事がショック”
それは、初めて言葉にした俺の本音だった。
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