記憶のカケラ

33/38
前へ
/38ページ
次へ
「渡辺様は、部屋に入るなり窓の外の景色をジーっと見つめていらっしゃったそうです。 きっと、渡辺さまも、望月さまと一緒に見たかったと、そう思われていたのだと思いますよ?」 「沙耶が…」 グッと胸が締め付けられる思いがした… あの時、俺が沙耶と一緒にいたら。 高梨社長の誘いを、延ばしていたら… “たられば”を繰り返しても、時は戻らない。 「望月さま、お疲れでございましょう? どうぞ温泉で疲れを取ってください。」 「…はい。ありがとうございます。」 沙耶はここで1人で何を考えていた…? 明日香からの言葉を繰り返してたか? 俺の言葉を、一瞬でも思い返してくれたか…? 頭の中を巡るのは、沙耶の事ばかり… 窓を開けて外の景色を眺める。 「綺麗だな…それに、此処は静かだ… …沙耶と一緒に、眺めたかった……」 冷たい風の音以外に何も聞こえない部屋… だが、この静かな時間は ずっとは続いてくれなかったんだ… .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加