記憶のカケラ

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それは 夕方を過ぎ、辺りが暗くなり始めた頃だった… 「結構、積もったな…」 部屋の窓から見える景色が、雪景色へと表情を変えていた。 俺は何となく、外に出てみたくなった… いつもなら、こんな寒い夜に出歩くなんて考えたりしないが、この夜は違っていたんだ。 「あら、望月様。お出かけですか?」 仲居さんの1人に声を掛けられる。 「はい。タバコを吸いに行くついでに、外の風にあたって来ようかと思って。」 「左様ですか。風邪など引かないよう、お気を付けくださいね。」 「ありがとうございます。」 「そう言えば、渡辺様にも…そうお伝えしたんです。」 「えっ…?」 「外は寒くなってきたから、暖かくして行ってくださいねと…」 「沙耶が、転落する前ですか…?」 「はい… あの時、私がお止めしていたらあんな事にはならなかったのに…」 「いえ、仲居さんは何も悪くないですよ… 全て、彼女を守れなかった自分の責任です。」 .
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