記憶のカケラ

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その目にいっぱい涙を溜めて、苦しそうに胸元を握り締める沙耶… 「沙耶っ!!」 「キャッ!」 ―ギュッ 俺は、沙耶を思い切り抱き締めた。 「無理して思い出さなくていい… もう一度、2人で始めよう?これから、2人で築き上げていこう!」 「か、課長さんっ!?」 「望月だ。」 「えっ!?」 「望月渉だ…。 沙耶は、俺を“渉さん”と呼んでいた…」 「課長さんを!? 私が下の名前でっ!?」 「ぷっ、そうだよ。そんなに可笑しいか?」 余りにテンパった沙耶の表情に、笑いが込み上げる。 「課長さん…不思議です… 抱き締められて、こんなに落ち着くなんて…」 「…そうか、良かった。 前は、なかなか出来なかったからな…」 「前…?」 沙耶はそう言うと、真顔で俺を見つめた。 「教えてください。 私たちは…どういう関係だったんですか?」 直球ストレートな質問だ。 だが… 「…俺が答えたら、それを100%信じるか?」 .
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