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「あの、看護士さん。
もし、彼女が外出したいとか、他にどんな小さな事でも、イレギュラーな事をお願いした時は、必ず俺に連絡ください。」
「藤井さん、何もそこまで!」
「彼女を守る為だ。」
「でもっ…!!」
藤井さんが、看護士さんにそう言ってるのを聞いてしまった私。
麻美は止めてくれてたみたいだけど、藤井さんの決意は変わらなかった…
“櫻旅館”
確かに知ってる名前のその場所に、早く行って記憶を呼び起こすキッカケを探しに行きたかったのに…
「仕方ない。黙って行くしか方法は無い…」
私は夕飯が終わって、看護士さんの見回りに少し時間がかかる時間を見計らって、そっと病室を抜け出した。
近くに泊まっていたタクシーに乗り込み
『櫻旅館まで』
と告げると、運転手さんは、優しく笑ってくれた。
そして、結構走った後、薄暗い景色の中に、見た事がある所があった…
「あのっ!ここで大丈夫です。」
「わかりました。
10分くらい歩くと旅館に着きますからね。」
「はい、ありがとうございます。」
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