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泣きじゃくる麻美の頭を、そっと撫でる。
「だったら、尚更“ありがとう”だよ…」
「えっ…」
麻美がゆっくり上げた視線を、私は笑顔で迎えた。
「こんな事でもない限り、麻美が側にいてくれる事や、藤井さんが助けてくれる事が当たり前の事としか思えなかったかもしれないでしょ?」
「…沙耶。」
「それにね、同じ人を2度も好きになれたんだよ?
渉さん、覚えてない私でも良いって言ってくれたんだ…。
私は、本当に幸せ者だと思ってる。
だから、もう謝らないで。ねっ?」
「沙耶…ありがとう!」
麻美は再び私の胸で泣きじゃくった。
私は、ずっと麻美の頭を撫でてたんだよ…
―コンコン
病室の部屋をノックする音がすると、麻美は顔をあげ、涙で腫らした目をこすった。
「遅くなってごめんな。体調はどうだ?」
「渉さん、藤井さん。来てくれたんですね。」
「当たり前だろ。心配だよ…」
「ふふっ、でもやっぱり何処も悪くないって言われました。」
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