聖なる夜に

32/36
前へ
/36ページ
次へ
「私たちの間には、本当に色んな事があったんですね。」 「そうだな。本当に、色んな事があった…」 渉さんの話をすべて聞いた私が思ったこと。 そんなにも、色んな事があったなら… そんなにも、幸せな時を過ごしていたのなら… 「忘れたくなかったです…」 「え…?」 「忘れたく無かった…悲しい事があったかもしれないけど それでも、幸せな時間を過ごした事実と、幸せだと思える今があるから。 忘れたく無かったって、心から思ってしまいます。」 私は、本当に悲くなってしまった。 渉さんに、心から愛されて、満たされていたのに… 私は、その思い出を無くしてしまった… 渉さんが好きだったという想いと、鳴りやまない心臓で、過去との因果を感じる瞬間は確かにある。 でも、それが何なのか。 何があって、こうなっているのか、分からないことばかり… 「沙耶。」 そんな私の心の声が聞こえてしまったのか、渉さんは私に優しく声を掛ける。 「…はい。」 「言っただろ?また一緒に始めようって…」 「えっ…?」 .
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加