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「沙耶…」
すごく驚いた様子の渉さんに、私は抱きついたまま答える。
「私、すごく渉さんの事が大好なんです。
きっと、また全部の記憶を無くしても、また渉さんを愛せる自信があります。
だから…10秒も要らないんです。」
これは、私の本心。
…自分の心に素直になった言葉だった。
そして、渉さんは私の手をほどいて、振り返り、私の顔を見つめる。
「…沙耶。」
「それにね?前に、渉さんが言ってくれました。
“どんなに苦しくて悲しい事があっても、最後にはきっと幸せにする”って…」
「そ、そんなクサい事、言ったか!?」
夜でも分かるくらい、渉さんは顔を真っ赤に染めて自分の頭をクシャッと掻いた。
「もう起こってしまった事を後悔しません。
無くした過去より、渉さんとの未来が欲しいです…」
「沙耶。ずっと一緒に生きていこう。
ずっと一緒に…」
「…はい。」
私は、心からの笑顔を渉さんに向けて答えた。
迷う必要がない。
愛しいあなたとの未来を…
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