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「すみません。抑えがきかなくなりました」 「……いいわよ」 愛らしい薄い唇から放たれた言葉があまりにも衝撃的で、自分の耳を疑う。 離れようとした僕の身体は固まり、その下には妙に色っぽい綾の姿。 身体を起こそうとすると、くいっと胸元を引っ張られて。 「わ、私は良いって言ったんだけど!」 そういうと自分の発言が恥ずかしくなったのか、うつ伏せになって顔を隠す。 だけどほんの少しだけ顔をこちらに覗かせる。 ……これは、もう本当に……なんて言ったらいいかわかりませんね。 可愛い、という簡単な言葉じゃ片付けられない。そっと顔をこっちに向けるよう手で促すと、いとも簡単にまた仰向けに。 一度唇を重ねると、綾の口角が上がった。 「私、好きな人とこんな風になれるなんて……普通の恋が出来るなんて思わなかった。だから、嬉しい」 「その相手が僕で良いんでしょうかね」 もっと普通の男の方が良いのではないかと思う。 綾にまだ見せてはいないけど、攘夷志士としての一面を決して失くしたわけではない。 邪魔な奴らを斬ったりして、綾を抱き締めるこの手は何度も血に染まった物だ。 「稔麿が好きよ。私は、稔麿が良いの」 微笑む顔は優しく人を包み込むような温かい笑顔。 それに吸い込まれるように、綾の華奢な身体を抱き締めた。
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