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藩邸とは距離が近い為、あっという間に帰ってくる事が出来た。
「稔麿! 話は……」
「特に収穫はなかったですね。晋作でも良かったのでは?」
「俺でも良かったのか……ってどういう意味だ!?」
「ふふっ。さぁ?」
不満そうな表情を浮かべる晋作に軽く微笑んで、自室として使っている部屋に戻る。
ゆっくりと襖を開けば、布団では既に綾の寝息が聞こえてくる。
行灯に火を灯せば、ぼんやりと部屋が明るくなり寝顔が露わになった。
あどけないというか、なんというか。寝ている時は本当に年相応の顔をしてますね。
普段大人っぽいぶん、余計にそう見えるのだろうか。
艶のある黒髪を手でとくと、するりと指から抜けていく。
「稔、麿……?」
目を細めて僕を呼びかけると、うんと腕を伸ばして身体を起こそうとする。
それを手で静止して、代わりに僕の方が布団に入れば一瞬にして目が大きく開かれた。
「な、な、何して……!」
「なんだか無性に傍にいたくて。だめですか?」
「う、うん。だめじゃない」
そう言いながら寄り添ってくるものだから、胸がきゅうっと痛くなった。
本当にベタ惚れしていると実感してしまう。
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