169人が本棚に入れています
本棚に追加
眼下に広がる下校し出した生徒の姿を見て、ペッと唾を吐く。
ーーーいつからだろう。
「あいつに好かれると死ぬらしいぜ」
そんな噂を立てられるようになったのは。
「あの子が好きになった人ってみーんな、怪我したり事故に遭ったりしてるらしいよ」
「何それ。なんかまるでーーー”死神”みたい!」
「怖ーい! 近付くのやめとこっと!」
自分の周りに人がいないことが当たり前になったのは、ずっと前の気がする。
むしろ、最初から人なんていなかったのかも。
『死神なんて呼ばれる子、怖いわ……』
”死神”と呼ばれ、なんとなくで生きていくのはもう、疲れた。
こんな世の中やってられるっかっての。そんなこと言われるくらいなら、いっそのこと死んで本当の”死神”になってやろうか。
三神 綾(みかみ あや)、17歳で人生諦めます。
学校の屋上から遠目に見えるスカイツリー。
そういえば昔は、東京も江戸なんて呼ばれて侍の国だったんだっけ。
死ぬ前に至極どうでもいいことを思い出す。
そこらへんでバッタバッタ人が死ぬ時代だったら良かったのに。
そしたら誰も、私のせいで死んだなんて言わなかった。
ゆっくりと一歩踏み出せば、身体がふわり宙を舞う。
ふわりと私の身体を撫でる4月の風は、暖かくて心地良い。
目を閉じると、今までのことが走馬灯のように頭の中に浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!