168人が本棚に入れています
本棚に追加
「目、開けろよ」
大人しく言うことを聞く気なんて更々無い。
ぎゅっと固く目を瞑ると、襟元から手が滑り込んでくる。
「何すんのよ!」
「目開けてくれたね」
「あっ」
斎藤の行動に釣られてつい、目を開いてしまって馬鹿だなと思った。
「そうやって目瞑ったらつまんないじゃん。俺を楽しませてよ」
「意味がわからない」
「もっと抵抗してくれなきゃ。でもって、俺を見てよ」
両手で顔を挟まれて、斎藤から目を逸らすことが出来なくなる。
かと言って目を瞑ればまた、変な行動をされるかもしれない。
本当最低。なんなのよ、こいつ。
精一杯の憎しみを込めて、睨みつけると斎藤の唇の端がきゅっと上がる。
「そうそう。そうやって俺が嫌で堪らないって顔をして。そんな女を虐めるのが好きだから」
「加虐趣味なのね。ここは変態しかいないのか」
「あははっ。変態ね。良いよ、それでも」
こいつは、誰よりもタチが悪い。
比較対象が藤堂くらいしかいないから、そう思うだけかもだけど。
「お話はここまで。綾ちゃんが欲しいのは本当だから。ここでしよっか」
にっこりと全く優しさのこもっていない笑みを見せると、斎藤と私の唇が重なった。
最初のコメントを投稿しよう!