168人が本棚に入れています
本棚に追加
無理矢理押し付けられるように重ねられた唇。
でもって、斎藤の舌が上唇をなぞるように舐めるから、寒気がしてならない。
「舌入れられないようにってしてる?」
「当たり前。もし入れてきたら噛みちぎってやるから」
「綾ちゃんが抵抗すればするほどさ、俺は益々したくなるんだよ」
斎藤一って言ったら、割と強い人だったとか言われてた記憶がある。
確か、クールで無口な剣士、みたいに歴史好きな子達が騒いでいた。
目の前にいるこいつはクールの欠片もないんだけど。ただの変態野郎じゃない。
グッと顎を掴む手は、顔の形が変わるんじゃないかってくらいの力を込めている。
指がめり込んで痛い。
でも、それを口にしてしまえば負けな気がするから、代わりに睨みつけるだけで止めておいた。
「平ちゃんより、俺の方がよっぽどイイと思うよ」
「性格が? 悪いけど、ここに性格の良い奴なんて一人もいないわよ」
「顔も性格も……なんなら、経験だって……ね」
こんな奴とヤるくらいなら、殺される方が断然良い。
女として惨めな思いだけはしたくない。
「離しなさいよ」
「そうそう。離してくれないと困るよ。誰に断って人の物に手を出してんの?」
チッと舌打ちをして斎藤が後ろを向く。
いつの間にか斎藤の後ろには藤堂が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!