168人が本棚に入れています
本棚に追加
藤堂は斎藤を見てニヤリとした笑みを浮かべる。
「一君ってば、それは俺のだってわかってやってんの?」
「今交渉してたんだ。俺にしない? って」
「へぇ……。で、その答えは?」
「誰にも手懐けられる気ないってさ」
「……そりゃそうでしょ。綾が手懐けられる、なんてつまんない」
斎藤の横を通り過ぎて、そのまま私の目の前にくる。
しゃがみこんで合わせられる目線。
茶色い瞳は性格とは真逆に澄んでいるから、吸い込まれそう。
伸びてきた手を振り払うと、満足そうに藤堂は笑った。
「うん。いつもの綾だ」
「はっ?」
「一君に色々されたみたいだから、変わってたら嫌だなって」
立ち上がり斎藤の方を向く藤堂は、なんだか危ない雰囲気を纏っている気がする。
「何? 平ちゃん。そんな怖い顔しないでよ」
「誰のせいだと思ってんの? これは俺のだからさ、触らないでよ」
「……平ちゃんらしくないね。そんな、独占欲が強い人じゃなかったじゃん」
”総ちゃんが取り乱すのも無理ないなぁ”と付け加えると、藤堂の肩が僅かに揺れた。
「総司になんか言われたんだ」
「別に。ただ、総ちゃんにとって平ちゃんは大事な存在。それが変わっていくのは良い気分じゃないだろうね」
最初のコメントを投稿しよう!