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藤堂は斎藤を見てニヤリとした笑みを浮かべる。 「一君ってば、それは俺のだってわかってやってんの?」 「今交渉してたんだ。俺にしない? って」 「へぇ……。で、その答えは?」 「誰にも手懐けられる気ないってさ」 「……そりゃそうでしょ。綾が手懐けられる、なんてつまんない」 斎藤の横を通り過ぎて、そのまま私の目の前にくる。 しゃがみこんで合わせられる目線。 茶色い瞳は性格とは真逆に澄んでいるから、吸い込まれそう。 伸びてきた手を振り払うと、満足そうに藤堂は笑った。 「うん。いつもの綾だ」 「はっ?」 「一君に色々されたみたいだから、変わってたら嫌だなって」 立ち上がり斎藤の方を向く藤堂は、なんだか危ない雰囲気を纏っている気がする。 「何? 平ちゃん。そんな怖い顔しないでよ」 「誰のせいだと思ってんの? これは俺のだからさ、触らないでよ」 「……平ちゃんらしくないね。そんな、独占欲が強い人じゃなかったじゃん」 ”総ちゃんが取り乱すのも無理ないなぁ”と付け加えると、藤堂の肩が僅かに揺れた。 「総司になんか言われたんだ」 「別に。ただ、総ちゃんにとって平ちゃんは大事な存在。それが変わっていくのは良い気分じゃないだろうね」
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