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「……総司は関係ねぇだろ」
吐き捨てるように言葉を口にする。
一瞬見えた表情は苦しそうで。
藤堂もこんな顔をするんだって知ると、少しだけ驚いた。
「関係あるよ。平ちゃんが綾ちゃんばっか構ってると、総ちゃんが殺しちゃうかもよ?」
斎藤は真っ直ぐ私を見て、指を差す。
沖田が、私の存在を疎ましく思っているのは知っている。
でもそれはどうやら藤堂が関係しているみたいで。
厄介なのに見つかったんだなぁ、私は。神様はなんで私を死なせてくれなかったんだろう。
こんな状況でも自分のことを考えられる私は、図太いというかなんと言うか。
ーーポツリ。
水滴が藤色の着物に滲んで空を見上げると、分厚い灰色の雲に覆われている。
弱い雨が降り始めた。
「……今日は諦めようかな。でもまた必ず、綾ちゃんのとこ来るからね」
「結構よ」
ひらひらと手を振って斎藤は遠ざかっていく。
残された藤堂と二人の空間は、あまり居心地の良いものではない。
「……あんたも戻りなさいよ」
「何一君に口づけなんてされてんの?」
無理矢理私の腕を引っ張って立たせると、目の前には眉間に皺を寄せた藤堂の顔があった。
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