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「安心して、としぞーさん。こいつを好きになる気なんて、これっぽっちもないんだから」
からかうように名前で呼ぶと、ますます尖った目に変わる。
「人の名前を勝手に呼んでんじゃねぇ。……なぁ、おい三神。てめぇは俺らの歴史を知ってんのか?」
新撰組の歴史。
知っているか知らないかと言われたら、知らないと答えるのが正しいだろう。
土方の名前こそは知っているものの、何をしたかなんて知らないし。
あー、でも一つだけ知ってるのあったな。
「池田屋事件」
「池田屋……?」
「ええ。確かそんな名前の事件はあったわ。内容なんて覚えてないけどね」
まあ、知っていたとしても教えてやる気もないけれど。
”使えねぇ”と呟くと、土方は顎で蔵の方を差す。
戻れ、ということだろうか。
雨に濡れた身体は冷えて寒いけれど、そんな贅沢なことも言ってられない。
蔵へと戻ろうと二人に背を向ける。
「待って。……土方さん。そこ、今日捕らえた長州の奴いますよね。そんな奴と綾を一緒にするんすか?」
そういえば、さっきまで蔵の中では拷問が行われていた。
ということは私は得体の知れない奴と、この中で過ごすということになる。
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