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「目的? そんなの決まってる。暇潰しだよ。ここに来る手間も省けるから良かった」
「……悪趣味」
「知ってる。それに……綾に好きになってもらうためには少しでも長く一緒にいなきゃ」
私に好かれると死ぬってわかってるのに、何故好きにさせようとするのだろう。
死にたいわけではないのに。
本当によくわからない男で、調子が狂ってしまう。
「俺の部屋行こっか。いや、その前に風呂が先かな」
そう言われて、自分達が雨に打たれていることを思い出した。
びしょ濡れになった身体は、いくら冬ではないとはいえ冷えて寒い。
伸ばされた手を渋々掴むと、藤堂は小さく笑って、それからゆっくりと歩き出す。
うわっ。つーか、屋敷ん中入ったらまた沖田とか斎藤に会わなきゃじゃん。
ふと浮かんだ二人の顔。
沖田はともかく、斎藤だけは本当に身の危険を感じる。
「そんな顔しないで」
「はっ?」
「大丈夫だよ。綾のことは俺が守るから」
「……馬鹿じゃないの。そんな言葉、喜ぶわけないじゃない」
「うん。知ってるよ」
……不覚にも胸が高鳴ったのは、私の中だけの秘密だ。
その後風呂に入り、そのまま藤堂の部屋に連れていかれた。
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