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受付カウンター前のソファーへと着いた俺達はどちらからともなく腰をおろした。未だ俺の手は夕凪の小さく温かい、すべすべとした肌触りのよい手に握られている。 夕凪はソファーに腰掛けてから少し何か考えるかの様に俯いていたが、顔を上げると俺を上目遣いに見て、意を決したかの様に口を開く。 「涼太さん、今日は学校で大変失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした……」 はて、夕凪に謝られるとは。余程、さっきのが堪えたんだな。 「いや、俺もやりすぎた所があったし、こっちこそごめんな。でも、やっぱり俺は学校を辞めようとは思わない。こんな俺の為に学校に通えるように尽力してくれた人を裏切りたくないしな。お前には嫌な思いをさせるかも知れんが」 俺の目から視線を逸らさない夕凪を真っ直ぐに見て俺は素直な気持ちを伝えた。 「いえ……もういいんですの。もう、涼太さん貴方に学校から去れなどと言うつもりはありません。本当にごめんなさい。それで……もし……もし、私の勝手が許されるのであれば……お願いしたいことがありますの」 「そうか。夕凪がそう言ってくれるのなら助かるよ。で、どうした?」 上目遣いの綺麗な瞳を少し潤ませながら言いにくそうに夕凪に俺はそう返した。 俺が学校にいてもいいと言ってくれたのだから、お願いくらい聞いても罰は当たらないだろう。それに、あの夕凪が俺にお願いがあると言ったのだ、無碍にはできない。 「涼太さんに言われたことを考えてみたのですが、間違っていたのは私でした。あんな嫌な態度を取った私を貴方は助けてくれました……。こんな馬鹿な私ですが、涼太さん……貴方がもし、嫌でないのならその……あの……お、おお友達にしていただけませんか?」 緊張しているのか俺の手を握る夕凪の手は熱く熱を帯び、頬は赤く染まっていた。
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