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◆空白の時間◆
そもそも小原さんはなんの目的で佐藤さんAを呼び出したのだろうか?
仮に被害届の取り下げで同行してもらう為だったとしよう。
佐藤さんBが取り下げに応じないとなれば同じ名前の佐藤さんAに頼んだとしても違和感はない。
だが、取り下げには被害届を出した時と同じ警察官が対応するはずだ。
当然面の割れている佐藤さんBと違う女性が来れば門前払いされると思う。
いくら名前が同じでも別人である為被害届を取り下げる事は不可能である。
さらになぜ夜中に呼び出したのか?
警察署に行くのであれば朝から夕方にかけて行くのが普通である。
夜中に行っても『明日また来てください』と言われるのがオチだ。
ここで考えられるのは佐藤さんAを呼び出した本当の理由はY氏の借用書に書いた保証人の名前が同じだったからではないだろうか。
借用書を書いた時、佐藤さんBは車で待機していたのでY氏に顔は見られていない。
つまりどこの佐藤梢さんを書いたのか知るよしもないのだ。
小原さんはその時佐藤さんBの事を書いたとしても同姓同名であるため友人の佐藤さんAの名前を書きましたと言ってもバレないのである。
もし佐藤さんAが『そんな話は知らない』と言っても保証人欄に勝手に名前を書いたのは小原さんなので『知らない』と抵抗しても無駄である。
勿論通常の借用書ではまかり通るはずもない、むしろ払う義務は皆無に近い状況だが、密室で日本刀を突き付けるような男にそれを言っても無駄な事は目に見えている。
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