第1章

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「美沙子ちゃん。また、来るね。」 引き戸を閉めて、今日の母は機嫌が良かったなと胸を撫で下ろす。 軽い内はホームヘルパーを実家に呼ぶ程度で補えていた母の記憶の解れも、今では施設に入居する程悪くなってしまった。 もう、私を娘だと認識する事は無く。 母は父と付き合っていた頃の二十二歳。若くて落ち着きのある介護職員を父だと思っている。 そして私は、そんな彼女の頼れるお姉さんの様な友達。 宜しくお願いします。と職員に頭を下げて介護施設ひまわりをあとにした。
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