第1章

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 どう見ても心霊写真としか思えない。地球だってありえないのに、 俺達はいま宇宙を航行中なのに。しかも見直すたび窓の外の女は、 絶対にこっちを振り向こうとしている。俺をあの瞳で視ようとする。  宇宙船イカロス1566より、地球へ愛を込めて。  落ち着け常識で考えろ冷静になれ。一先ず整理してから判断だ。 俺達4名のクルーは数日前に、地球を出発し月面を目指した。 既に何人もの宇宙飛行士が、その窓から青く輝く美しい地球をみた。 だが、やはり俺たちも感動を隠せなかった。眩しくて美しかった。  目的や何やらの細かい話は省略しよう。よくある探査計画なのだ。  航行は順調に進み、俺達はゆるくない着ぐるみのような服を脱ぎ 食事をして、キャッチボールを楽しみ、子供の様にはしゃいでいた。 船長のアシモフ、司令船操縦士のブラッドベリ、それから俺自身が 月着陸船操縦士のクラーク、最後が搭乗運用技術者のディック。  これら最高のチーム4名は、それ以上に管制室スタッフの面々、 地上支援飛行士クルー、メーカー技術者チーム。最高の人々から バックアップを受けながら、快適なフライトを楽しんでいた。  数時間前の事だ。地球から300Km以上、離れた辺りで船外に 微細な何らかの衝撃が確認された。万全を期す為にも要チェックと ディックは提案して、アシモフ船長が管制室から許可を得て 搭乗運用技術者のディック自身が「再び愉快な着ぐるみだな。」 こんなジョークでクルーを和ませた。  宇宙船の窓から、船体へ異常が無いか確認作業をしている姿を 皆が見守った。動画はブラッドベリが撮影していて、アシモフは 指示の為に緊張感を持っていたが、恐らくは微小天体の残骸が 軽く掠ったのだろうと予測していた。  事実、船体には何ら傷も見当たらなく、ディックが確認終了を 合図したのでブラッドベリも、アシモフと管制室からの指示で、 動画撮影を終了した。緊張が緩んだのもあって、船内に戻ろうと ディックが窓を横切った時に、船内の我々に手を振って合図した。  我々も親指を立ててディックを讃えた。その時、俺は私物の、 デジタルカメラで数枚の連続写真を撮影した。ディックの勇姿を、 見せてやろうと思っていた。4枚撮影したのだが、3枚目までは 何も問題がなかった。その3枚は船内に戻ったディックやクルー、 管制室にも送った。
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