4人が本棚に入れています
本棚に追加
どう見ても心霊写真としか思えない。地球だってありえないのに、
俺達はいま宇宙を航行中なのに。しかも見直すたび窓の外の女は、
絶対にこっちを振り向こうとしている。俺をあの瞳で視ようとする。
宇宙船イカロス1566より、地球へ愛を込めて。
落ち着け常識で考えろ冷静になれ。一先ず整理してから判断だ。
俺達4名のクルーは数日前に、地球を出発し月面を目指した。
既に何人もの宇宙飛行士が、その窓から青く輝く美しい地球をみた。
だが、やはり俺たちも感動を隠せなかった。眩しくて美しかった。
目的や何やらの細かい話は省略しよう。よくある探査計画なのだ。
航行は順調に進み、俺達はゆるくない着ぐるみのような服を脱ぎ
食事をして、キャッチボールを楽しみ、子供の様にはしゃいでいた。
船長のアシモフ、司令船操縦士のブラッドベリ、それから俺自身が
月着陸船操縦士のクラーク、最後が搭乗運用技術者のディック。
これら最高のチーム4名は、それ以上に管制室スタッフの面々、
地上支援飛行士クルー、メーカー技術者チーム。最高の人々から
バックアップを受けながら、快適なフライトを楽しんでいた。
数時間前の事だ。地球から300Km以上、離れた辺りで船外に
微細な何らかの衝撃が確認された。万全を期す為にも要チェックと
ディックは提案して、アシモフ船長が管制室から許可を得て
搭乗運用技術者のディック自身が「再び愉快な着ぐるみだな。」
こんなジョークでクルーを和ませた。
宇宙船の窓から、船体へ異常が無いか確認作業をしている姿を
皆が見守った。動画はブラッドベリが撮影していて、アシモフは
指示の為に緊張感を持っていたが、恐らくは微小天体の残骸が
軽く掠ったのだろうと予測していた。
事実、船体には何ら傷も見当たらなく、ディックが確認終了を
合図したのでブラッドベリも、アシモフと管制室からの指示で、
動画撮影を終了した。緊張が緩んだのもあって、船内に戻ろうと
ディックが窓を横切った時に、船内の我々に手を振って合図した。
我々も親指を立ててディックを讃えた。その時、俺は私物の、
デジタルカメラで数枚の連続写真を撮影した。ディックの勇姿を、
見せてやろうと思っていた。4枚撮影したのだが、3枚目までは
何も問題がなかった。その3枚は船内に戻ったディックやクルー、
管制室にも送った。
最初のコメントを投稿しよう!