第1章

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じゃあ、各自手元のPADへ転送するぞ。と言って、すぐに再生された。  何も写っていな、くない!映像は作業終了確認までしかないのだから 船内へ戻ろうとして、途中の窓から写真を撮った所は映っていない。 だが、作業確認が終って、斜め上方からディックを映しているカメラは ディックの足元付近に、わずかに金色の髪の毛のようなモノを撮っている。  となると作業中の時点では【彼女】は船体の下に居て、ディックが横へ 移動すると同時に上に昇ってきた事に。  いや、違う。それはおかしい。写真の最初の3枚に写っていない理由が 無くなってしまう。違う、違う、違う、そうじゃない。 宇宙服もなく人間が、宇宙空間にいるなら、ゴーストか知的地球外生命。  だから、なんでそうなるんだ!俺はどうかしちまったんじゃないか!  そうだ。作業用ヘルメットにはカメラが付いている。全工程を撮影して 管制室へ送っている。だから、作業終了からディックが船内へ戻るまでを 全部、記録されて。違う。管制室も船長も見てるし、そもそもディック! 彼自身が肉眼で視認しているはずだ。あんなでかい物体をこの闇の宇宙で。  闇の宇宙。窓に女が。金髪の女が貼り付いてる。真っ赤な瞳で。視てる。  ああああああああああああああああああああああああああああああああ  船の外側、船の外側、船の外側、船の外側、船の外側、船の外側、外側! 「おい、どうした!」「クラーク!大丈夫か?!」「返事をしろ!」  女がそこにいる。いまもまだいる。後ろの窓にもいる。赤い瞳だ。 正面の操縦席から見えるメインウィンドウにも、ベッタリ貼り付いてる。 「写真だ!視てくれ!皆には見せていなかったが4枚目だ! こ、こっちを向いてる!この静止画像が動いているんだ!ダメだ! 管制室、管制室!こちらイカロス1566。緊急事態だ管制室!」 「こちら管制室。クラークどうした。何か問題が起きたのか?」  「いますぐ、画像を送……。違う!船外カメラで イカロス1566を確認してくれ! 無数の赤い瞳の女が映ってるはずだ!」 「……何をいってるの?……クラーク?」  管制室からの画像が、赤い瞳の女性に変わった。 俺は、慌てて管制室との連絡スイッチを停止させた。 「何て事をするの?クラーク?」 「ダメじゃない、クラーク?」 「悪い子ね、クラーク?」  アシモフも、ブラッドベリも、ディックも居ない。
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