515人が本棚に入れています
本棚に追加
「みんな、少しだけ眠っちゃってそのあとから、何か周りがおかしくなったと思いはじめたんだよね? そうだよね?」
佐織は、確認するようにここにいる全員の顔を一人一人見て、話す。
それは、佐織の言うとおりである。ここにいるライムも良も美代も、そして、いま話している佐織自身も、少し寝てしまってあとからこの奇妙な出来事の連鎖に巻き込まれている。
「それだったら、例えばだよ。ほんとに、例えばの話。もしかしたら、私たちは全員、周りもみんなもまったく同じだけど別の世界に来ているとかありえないかな? もしかしたら、これは夢の世界だったりとか………」
普通なら、笑ってしまうところだろうが、今回は笑う者は一人もいない。
良はよく分からない部分もあるが、ライムと美代は、それもあり得ない話ではないことを十分に理解していた。
二人とも平然と人を刺す現場を目撃し、白いモヤに操られるように柏木は窓から飛び降り、食堂にいた生徒もほぼ全員、殺されてしまった。
だからこそ、佐織の話もひとつの可能性としてちゃんと考えてみる必要があるのだ。
ライムは、良を見る。良は、困ったような顔をして、右手で頭をボリボリとかいている。良は、話の展開についていけず、動揺していたのである。
最初のコメントを投稿しよう!