第1章

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「少年法って知ってるか? 内容はともかく、聞いたことあるやつは手を挙げてみろ。」 生徒のほとんどが手を挙げる。聞いたことない方がおかしい。 数ヶ月前のことである。長府学園で不慮の死があった。その原因は不明。先生たちは何かを知っているようだが、生徒は詳しいことを知らないままだ。 そして、そのときと近い時期に行われた講話があった。命の大切さを語る講話である。 そのときの講師が元警察官だったこともあり、少年法という言葉は繰り返し出てきていたのだ。 ただ、その講話と長府学園で起きた不慮の死が関連づいているのかは分からない。 安芸先生は、ほとんどの生徒が手を挙げているのを見て、手を下ろすように言う。 「少年法というものは、14歳以上の者が犯罪を犯したとき、その罪を厳罰化することができるというものだ。だが、それは、凶悪犯罪が対象に絞られており、現実的には………といったところだな。」 安芸先生は、ふぅっとため息をつく。 「だから、結局は大半は、ある程度の期間、少年院などに収容されたら、罪を償ったことになり、あとはノウノウと生きているやつもいる。そして、明らかにクロなのに、証拠がない、因果関係がないなどと言い、逮捕もされない奴等もいるんだ。」 安芸先生が、急に微笑む。 「時間だな。」 安芸先生がそう言うが、みんな何のことか分からない。 だが、すぐにその意味が分かった。 ざわめき出す生徒。 舞台の上に、ぎこちない動きで上がる人物。安芸先生の横にその人物は並ぶ。 「ああ、校長先生。まだお話が足りなかったんですか。それでは、どうぞ。」 安芸先生と校長先生の位置が変わる。 校長先生が、マイクに向かって話し出す。
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