第1章

136/234
前へ
/234ページ
次へ
「ああ………ああ………」 校長先生は、涙を流し、鼻水も垂れながら、もう恐怖のあまり、言葉を発することができないようだった。 もう、いつもの生徒たちに熱弁をふるう校長先生の姿はない。このような状況であることは分かっていても、泣きながら安芸先生に許しを請う校長先生の姿は無様であった。 「やめろ………やめてくれー!!」 校長先生がマイクに向かい、大声を出す。拡張された声は、鼓膜が破れんばかりの大声である。 あ、あれは……… ライムは見た。白いモヤが校長先生の中へと入っていくのを。 このとき、何が起こるかは分かっていた。 どのような過程であれ、結果は同じになる。 校長先生も、白いモヤに操られ、理科室の窓から飛び降りた柏木と同じ姿になる。 つまり、その結果は……… 死である。 食堂でも同じだった。白いモヤが現れ、結果としてライム、良、佐織、美代以外は全員死んだ。 あの白いモヤが現れたら、必ず良くないことが起こる。それだけは確実に言える。 「良! 佐織! 美代!」 ライムは三人を呼ぶ。 表情を見て分かる。三人も白いモヤを見ただろうことを。 しかし、他の生徒はおそらく見えていない。 他の先生方も、もちろん見えていないだろう。 それなら、やるべきことは……… いま、できることはひとつしかない。 ライムは、腹の底から大声を出した。 「みんな!! 逃げろっ!!」
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

515人が本棚に入れています
本棚に追加