第1章

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それを見て、呆然としている生徒。目を両手で覆う生徒。みんなを押し退け、口元を手でおさえ、離れた場所で吐く生徒。 ライムはそれを見て、疑問に思うことがある。 二時間目の休み時間、廊下で生徒同士のケンカが起き、一人は刺された。重傷にも関わらず、みんなは無関心だった。 四時間目のときもそうだ。理科の実験として、机の前にだされた袋の中身は、安芸先生は断言しなかったものの、中には死体の一部が入っていた。 しかし、それにもみんなは、基本的に少し驚いた声をあげたりすることはあったが、動揺はしていなかった。 そして、柏木が目の前から飛び降りても平気で昼食時間へとうつった。 だが、いま目の前にいる生徒たちはうろたえている。 この違いは何だろうか。 現実では想像できない悲惨な光景。何がどうなっているか、あの白いモヤが何なのかなど説明できることはない。 でも………… 一人だけは、確実にその真相を知っている。 ライムは心のなかで、それだけは唯一、確信を持つことができた。
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