第1章

158/234
前へ
/234ページ
次へ
「それじゃあ、いつものホームルームをはじめるから、人数が少なくてもいつもどおりにいこう。それじゃあ、ライム。いつもの号令を頼む。」 こんなときにもいつもどおりやるつもりなのかよ、とライムだけでなく、ここにいる良、佐織、美代は思う。 しかし、それを口に出して、不満を言うことなどはしない。 「起立、礼!!」 不満を抱きながらもライムは、いつもの声のトーンでホームルーム開始の号令をする。 全員、起立をし、お願いします、と大きな声を出し、着席をする。 安芸先生、沼田先生もそれに対してお願いしますと、頭を下げる。 しばしの沈黙が教室に流れる。 教壇に立つ二人の先生は、四人の顔をしっかりと見ている。 先生が、生徒の顔を見るのは当たり前のことだ。話をしっかり聞いているか、授業の内容は理解しているかなど、その視線を向けるという動作には、たくさんの意味がある。 だが、いま向けられている視線の意味はおそらく、それとは別種のものなのだろうとその場の雰囲気で感じることができる。 最初に口を開いたのは、安芸先生だった。 2年4組の担任である安芸礼先生である。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

515人が本棚に入れています
本棚に追加