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紫さんのスキマを潜り抜け、僕は幻想郷の地に降り立った
目の前には一軒の屋敷が建っている
「此処は……ふふ、懐かしいね?紫さんの家だ」
「えぇ。此処は全然変わっていないでしょう?」
「うん。全然変わってない。よくお茶に誘われて此処に来たのを思い出すよ」
「そうね。貴方にお茶溢しててんやわんやになったわよね?」
「あの時は流石に焦ったさ。僕は水と火と刃物が嫌いだから」
「あの時は本当にごめんなさいね?」
「気にしてないよ紫さん」
紫さんの自宅の前で思い出話に花が咲く僕達
すると、その声を聞き付けたのだろうか?屋敷から誰か二人程出て来た
「おや?お前はもめんじゃないか!久し振りだな!何百年以来だ?」
「二百年だよ、八雲藍さん」
出て来たのは紫さんの式である、九尾の狐の八雲藍さん。彼女とは、紫さんが彼女を式とした日からの旧友さ
「二百年か……。もうそんなに会っていなかったんだな。会えて嬉しいよ」
「僕もだよ。ところで……」
「ん?」
「其方の可愛いお嬢さんはどちら様かな?」
久し振りに会った旧友との挨拶もそこそこに、僕は藍さんの後ろに居る小さな娘に視線を移す
猫耳で二本の尻尾……どうやら猫又みたいだ
「あぁ、お前はこの子の事は知らなかったな。何せ、お前が幻想郷から出た後に、私が式にした子だからな。ほら橙、挨拶は?」
「えっと……藍様の式の、橙って言います!宜しくお願いします!」
「これはご丁寧にどうも。僕は布崎もめん。どうぞ宜しく、橙ちゃん」
ペコリと、深くお辞儀して挨拶してくれた橙ちゃんに、偉い偉いと僕は頭を撫でてあげる
「よく言えたね橙。偉いぞ~」
「はい!藍様と一杯練習しましたから!」
「ちぇぇぇぇぇぇん!」
「へぇ?藍さん、昔に比べて大分丸くなったと思ったら……この子のお陰なのかな?」
「そうよ。何時も何処でも『ちぇぇぇぇぇぇん!』って親バカっぷりを発揮してるわ」
「アハハハ。あの九尾の妖狐と畏れられた藍さんが、此れ程骨抜きにされるなんて……橙ちゃんの笑顔は最強という事かな?」
「勿論だとも!橙の笑顔は世界を平和に出来るんだッ!」
「あ、これは相当だ」
まっ、本人が楽しそうで何よりだけどね
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