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医者は当に呼んだらしいのだが、なかなか移動しない台風の影響でとても来られないらしかった。その医者は一応台風が移動した朝五時くらいになると電話を掛けてきて、少しは熱が下がったかどうかを聞いて来た。彼女が意識も戻らないし、熱も高いままで一向に下がらない事を伝えると、台風の後始末が済み次第来るつもりでいるが、今夜六時頃までに容体が変わらない。もしくは悪化するようなら死なせない為に強烈な薬で治術するしか無く、場合によっては植物状態か半身麻痺等になる事を覚悟するようにと言われ、彼女は台風ごときを理由に来ないヤブ医者は黙りなさい。と激怒して電話を切り、一時の休息も取らず春の傍で付きっきりの看病をしながら会話の一部始終を聞いていた冬は震えあがったが、そんな相反する二人の耳にはずっと春が奏でる涙混じりの浮言が届いていた。
【…ごめ‥なさぃ…‥冬…ごめんな、さぃ………っ…やだぁ嫌‥いや行かないで………う‥‥っもぅしない…しないからヤだ、やだああ、、、ごめんなさぃ!ごめんなさ…ごめんなさぃっ…‥!!】
タオルで縛りつけられている両手足を動かして、酷い咳や過呼吸でしまいには呼吸困難になって痙攣を起こし意識を衰弱させたまま泣きじゃくっている春が本気で今にも不安と悲しみでガタガタになってしまった心を高熱によって燃やされ失くしてしまうと察した珠里夜は姉としてでも、育母としてでも無く、何かを知る人物独特の態度で目前で不安と恐怖に支配されていた冬に向かい、命令する。
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