第2章~好き~(冬の華編)

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しかし、今でさえこの美貌と色気で様々な苦労をされている貴方の事です。育母の元を離れてしかるべき姿になってしまったらきっと、今以上の苦労がこの身に降りかかるかもしれない…‥しかし、今の春を救う為にはせめて薬草が必要です。ですから、冬…。私は春を傷付けた対価として、貴方に、犠牲になれと命じます!と、冷たい口調で云い放った彼女の左右色の違う瞳からは自分へ向ける哀れみと、それ以上に彼女自身を攻めばむ己への強い怒りの涙が込み上げて、だが一筋も溢す事なくギリギリと堪えてただそこに居た。 「姉さん…」 冬は、このヒトがずっと自分の育母だったら良かったのに。と、改めて思った。このヒトが自分の本当の姉さんだったら幸せだと、改めて思った。だから、 「~‥教えて下さい。僕はどうすれば薬草の力を使えますか?」 《良いのね?》 「はい。春を助けられるなら…‥僕を、姉さんが許してくれるなら、なる。」 《…………っッ……!》 何も云わず、でも、全身が痛いと悲鳴をあげるくらい強く抱き締められて、冬は、心から笑顔した。 絶対にこのヒトと、春のコトを失くしたく無い。だから自分は、二人を失くさない為に今、出来る事をするんだ。と、だからその為にこれから自分が傷付く事になっても、失くす苦しみと比べたらずっと良いんだ。と、心と頭で呟く気持ちが、これ以上無い程他者を魅了してしまう笑顔を彼の美しい顔に造らせていた。
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