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秋冬両秤の神である自分が薬草の力を解放する為には、秋か冬、どちらかの季節に芽吹く薬草や薬木の中から今使いたい物を心に描き、呼び込む。後は無になって使いたい効力を髪の先から足の爪先まで身体全体を使ってたぎらせ、内に実らせる事が出来れば能力として自由に使う事が出来るというもの。
「…………。」
冬はまず春の呼吸困難を引き起こしている一番の原因でもある咳を止める為、心にオオバコを描いた。
理由としては、オオバコがオオバコ科のオオバコ属で、花期は四月~十月。
人に踏まれる所に生え、種子は何かに踏まれると粘液を出してくっつき運ばせる特徴があり、踏まれなければ背の高い他の草に負けて姿を消してしまうが、乾燥させた種子5~10gを500ccの水で煎じ、一日三回服用する。すると咳止め、下痢止めの効果がある品物だからだ。また、ここに補足すれば、10~15g程度の量の乾燥させた葉を400ccの水で三十分程度煎じ、一日三回程度服用すると健胃、整腸、利尿の効果もある薬草なのだ。
《~完璧です。では着ている物を全て脱ぎ、春全体を貴方という薬草で包み込んで体内で煎じた物を与えなさい。》
と、耳に届くクールな珠里夜の声に従い、冬も一式まとわぬ生まれたままの姿になると静かに足を進め、高熱と咳、嘔吐と痙攣に見舞われている春のベッドに潜り込み、その弱り切った身体を優しく包み込むと、彼の唇に自分の唇を重ね、どうか壊れないでくれと願っているような甘く、深くて長いキスをしながら体内で煎じた薬草を少しずつ与えて温める。
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