第3話

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第3話

第3話 そもそも彼は別に真面目でもないし、勉強が好きでもない。 運動も走る事は得意であったが、抜群の運動神経を持つでもなく、 普通と言えば普通の中学生だった。 ただ、不条理な大人に対する怒りみたいな感情は常に持っていた。 それは中学1年の終わり頃に家庭が崩壊してしまった事が理由の1つでもあるのだろうけど、 その点は彼には責任はないだろう。単に両親の問題だ。 しかしその崩壊した家庭に身を置く事は楽しい訳じゃない。 中学3年の始め頃にはライブハウスのクロークなどのアルバイトしたり、 その後、夜の繁華街をうろついたりした事もあるけど、 そこに自分の居場所を感じるタイプではないようだった。 彼は団体行動も苦手だし、他人との協調性もないタイプなので、 友達と群れたりする事も、そんなに好きではなかった。 そんなタイプの人間は、繁華街うろついてても疲れるだけだね。 そもそも独りで居る事に寂しさは感じてないのだから。 そんな中で彼には唯一と言ってもいいほどの心の支えはあった。 それは子どもの頃から好きなオートバイと自動車であった。 自分が16歳の誕生日になり、免許を取得してバイクに乗る事。 そして18歳になり自動車に乗る事。 それだけを夢見て生きる事が心の支えであったのかも知れない。 バイクに乗れる日を夢見て、自転車で走り回り後輪をすべらせて遊んでばかりいた。 そのおかげで、彼の自転車のタイヤは数ヶ月ごとに交換せねばならないぐらいだった。 16歳になればバイクに乗って走り回るのだ。 すべての嫌な事を振り切って走り回るのだ。それだけを夢見ていた。 その為にはどう人生を生きるべきか? 高校なんか行かずに中学卒業すればとっとと働こうとさえ思ったそうだ。 しかし周りから説得されたのか、それとも現実問題として感じたのか、 やはり普通の高校生のように遊びたかったのかわからないが高校へは行く事を決めた。 高校へ行く事を決めたのならば、希望する進路へは確実に行きたい。 となるとやはり勉強はすべきだと彼は判断した。 中学2年生の終わり、自ら進んで近くの塾の春季講習に申し込んだ。
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