6105人が本棚に入れています
本棚に追加
/434ページ
俺は地獄に舞い降りてきた蜘蛛の糸のように、
涙は自分の計算外の提案に、
思わず声を上げた。
「どうやら新しい兄弟に夏生くんがまだ戸惑っているようだ。私たちが新婚旅行に行くばっかりに急に二人きりにしたせいだろ? 末の弟は少し変わってるが年は近いし、聞き上手で話上手だから」
「……それでしたら……でも、研究室に缶詰めになる日もあるから毎日は無理だけど…帰ってきます」
二人っきりじゃない。
それだけでも大分違う。
「俺は早く二人で慣れたいのに。龍ちゃん、オカマ口調だから嫌いなんだよねー」
どうやら『龍ちゃん』というらしい義父の弟に明らかに不満をもつ涙。
だがそれはそれで好都合だ。
「家庭教師の件も、大丈夫よね?」
母さんに強く言われ、……頷く事しかできなかった。
「まぁ兄さんが家庭教師を引き受けてくれるなら……俺も我慢するよ」
渋々の渋々の渋々頷く涙は笑顔だが、目が怖い。
思わぬ伏兵に、算段をまたやり直している様子だ。
最初のコメントを投稿しよう!