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千冬副隊長との回線を切り――
エントランスを足早に駆け抜ける。
目指すのは、指定された場所――東館の男子トイレ。
エスカレーターを使い、テナントを通りすぎる。
だんだんと人がまばらになってくる。
突如、スマートフォンの着信音が鳴った。
八代目水野水乃を名乗る男が送り付けてきたスマートフォン――。
通話をタッチパネルで操作する。
「……はい」
『お疲れ様。さすがだね、足が速い』
茶化したような、人を喰ったような声色――。
無言のままでいると、男がくっと喉の奥で笑うような声を出した。
『もしかしたら……怒ってる?』
「当たり前だ!!」
大きな声を出すと、通りがかった若い女性が怯えたようにこちらを見て、そそくさと歩いて行った。
『ふーん……。死番隊長は意外と感情的なんだね……。もっとクールだと思ってたけど……』
『でも、それも悪くないね』と笑う声が聞こえた。
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