目撃者

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 安堵し、  引き返そうと目を開けると、「ひ、」という情けなくか細い悲鳴が漏れた。 ――2階のホール。  いつの間にか、2階に辿り着いてしまっていた。  自分の意思で止まったんじゃなかったんだ。  身体はやはり何かに支配されているようで、自分自身の身体がひどく気持ちの悪いものに思えた。  すぐに引き返そうと下を見る。  先が全く見えずに、ぞくりとした。  絶対に、このまま降りてはいけないような気がした。  流れに逆らってはいけない、と。  噂の物入に何も無いと確かめて、  恐怖心を消し去るべきではないかと思った。  そうすることが一番安全だと、不思議と確信していた。  ほぼ1階と同じで、2階道場に光が挿していたからだ。
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