目撃者

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 俺は光を求めるように道場に入り、  物入へと向かった。  オレンジ色の光りが、俺の恐怖心を和らげた。  剣道部が主に使っている2階の道場は、板張り。  足の裏が、やけに湿っぽく、ヒヤリとするが、俺は気にしないようにしながら、足早に奥へ進んだ。  奥の剣道部部室を通り過ぎ、  更に奥の、  一番隅に在る、  通常より巾(はば)の狭い扉の前に立つ。  噂の物入の扉だ。  扉はクローゼット等によく使われる、  二枚折れ戸。  素材・色共に壁に馴染み、存在感を主張しない。 ――いつも昼間見るときは。  だが、この時の扉はまるで、此処がこの建物の“核”であるかのような、重厚なオーラを放っていた。
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