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死んでもまだ、終わることはできなかった。
僕はこの居心地の良い物入に籠り続けた。
たまに窓やドアが開いた時に外へ出られたけれど、武道館の周辺までしか自由に行動できなかった。
一応僕は悪霊になってしまったらしく、人に禍害をもたらす存在となる。
ただの八つ当たりだ。
本当は僕だってもっと生きたかったのだから。
そうやって何となく幽霊をやっていた或る日、
運命の出会いが訪れる。
とても綺麗な子だった――そう、及川君だ。
彼は友人と共にこの物入に訪れた。
何かよからぬことを相談しているみたいだったけれど、
僕は彼自身にしか興味が無かった。
整った顔立ちに、際立つ痣。
僕の背中のモノとは正反対で、その痣が彼の魅力そのものだった。
新雪に施したアートのようだし、
彼の美を引き立てる化粧のようでもあった。
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