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「ええ!? 宮路、知らないの?」
横から調子のいい声がする。
隣の席の、今井だ。
「うん、知らない。よければ教えてくれないかな?」
「去年失踪したっていう、あいつ」
あいつ、と言われて、
にこにこしていた宮路の表情が、一変した。
「泉……泉がどうかしたの?」
ただの噂話を聴くつもりだったのが、彼にとっては真剣な話に転じたようだ。
無理もない。
1年で同じクラスだった友人が、突然失踪したのだ。
何か情報があるのなら、気になるところだろう。
「うん、その……及川泉の幽霊が出るんだよ……」
「幽霊って、まさか! そんな……幽霊って、まるで泉が死んでしまったみたいじゃないか!」
椅子から立ち上がった宮路に、クラスの皆が注目した。
「落ち着けよ、これは単なる噂だ」
俺が宥めると、一応は座ったものの――
「噂にしても、性質(たち)が悪い」
と不愉快そうな視線を俺達に向ける。
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