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「どうする? やめる? この話」
「いや、続けて。聴きたい」
失踪した友人について、今まで何の情報も得られなかったんだ。
例え聞きたくない話でも、知りたいと思ったようだ。
俺たちはそんな宮路の様子を察し、
怖がらせて怪談話を楽しむのではなく、
ただ、自分たちが見聞きした情報を端的に伝えるために、話し始めた。
「武道館2階の道場物入に、丁度深夜2時頃。及川泉に似た奴が出るらしい」
今井が珍しく、真面目な口調で言う。
「深夜2時? そんな時間に、一体誰が見たっていうの?」
「夜間巡回の機動警備員が見たって」
「まさか……、万一見たとしても、警備員が見たという話を、生徒が知っているのはおかしくない?」
宮路の至極当然の疑問に、俺は頷く。
「ああ、俺もそう思っていた。
もしかしたら、教師の話を生徒が耳にしたのかもしれないが、そんな迂闊な教師がこの学校に居るとは思えない。
だから俺は全く信じていなかった。実際自分の目で見るまでは――」
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