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そのまま病院に着くと、ある程度安定していた父の一般病棟への移動の話しが出ていた。
母は、父は若い頃の結核の入院で病院慣れしていて、入院することを楽しめる人だと言った。
まぁ、父も母もそこが出会いの始まりだったのだから仕方がないのだが、だから母も私も、きっと一般病棟に行けば、ちょこちょこ面会に行かなくても、父の気がまぎれるだろう位に勝手に思っていた。
取り敢えず、父が一般病棟に移る検査の話しをして、今日は終了させて母と二人で帰る事にした。
すると父も帰ると思ってなかったらしく不安そうな顔をしたので「また、明日ね。」と言った。
それから、どうやって帰ったのか?記憶が飛んでしまっていた。
朝来る時の電車の話しが気に成ってはいたが、母に何をどの様に聞いたら良いのか分からなかったし、先に進ます話しの方が優先して、心の中で後回しにしなっていた。
私も母も疲れていた。
電車を乗り換える度、足が重く感じて、私は後どの様な行程を踏む事で我が家にたどり着くのか余力を計算していた。
やっと母を実家に送り、そのまま帰ろうとすると、母は泊まっていけと言った。
帰ると言うと、まるで駄々をこねる様に言うので、多分、母も一人で我慢して来た事を思い、きっと余程のことの事に思えて仕方なく受け入れる事にした。
母は何時も私に対して強い態度で接していた。
それは当たり前の事だった。
でも、今日一日の中で様々な事が起こり整理出来ないままでいたせいなのか?
軽い夕食を母とつまみながら、私は言ってしまった。
「なんで、私一人しか産まなかったの?」と、
この私にとって何気ない言葉が母の心の地雷を踏んでしまった。
それからは後悔しても既に遅く、凄まじい勢いで怒り始めた。
もうこうなったら、押さえが効かないのは経験している。
何処にこんなエネルギーが残っていたのか?
私は只、相対する気力もなく、その波が去るのをひたすら感情も無く通り過ぎるのを待つしか無かった。
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