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お父さんは入院中でも、いつも通りの朝。
交差点で、隣に影ができないかなってちょっぴりの期待。
私は、課長が気になって仕方がないらしい。
キタ。
陰った。
「おはよー。」
ドクンと跳ねた心臓。
平常心平常心。
「おはようございます。課長。昨日はお世話になりました。」
「ふっ、もういいから。何回同じことでお礼を言ってんだよ。」
そうだけど、そうなんだけど、でも、本当にお世話になったと思ってるから言ってるんだぞと。
相手が課長だと言えない。
そんな強気には出られない。
信号が青に変わって、歩き出す。
人の流れにのって。
「父、今週中には一般病棟に移れそうだって聞きました。何もなければ。」
「そっか、移れるといいな。あー、どうしよっかな・・・。週末、やめとくか。」
ドクン。
ドクン。
こ、これは、人生初のデートについて・・・ですよね。
はははっ。
やめとくか。
「何?残念だったか?」
「いえいえ、やめておきます。」
「・・・そりゃ、残念。」
えっ。
いや、自分でやめとくかって言って、残念って。
「お前さ、何か反応しろって。俺、残念って言ってるのに、反応されないと、すげー恰好悪いだろ。」
「ふふふっ。恰好悪いですかねぇ。いいんじゃないですか?人間らしくて。」
「・・・そこでそういう顔して笑うのは反則だろ。すげー可愛い。」
ドックン。
跳ねた、確実に心臓が跳ねた。
そういうこと、言われ慣れてないし。
なんだろう、恥ずかしい。
「顔、赤いよ?」
「か、カチョーのせいです!!!」
「ぶっ、声まで動揺してるって、新藤さん。はははっ。」
あっ、笑ってる。
「課長の方こそ、そこでそういう顔して笑うってなくないですか?ひどい。」
「ひどくないだろ。昼飯、公園行かないか?」
ドクン。
ドクン。
速くなる、胸の鼓動。
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